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〈保険契約者の利益を保護〉するために、〈締結又は募集に関する禁止行為〉(第一六条)として、〈不実のことを告げ〉る行為、また〈重要な事項を告げない〉行為などをあげている。
ここでみた積立型保険の実際の設計や内容は、さまざまな詐称で〈不実のことを告げ〉、また商品の基本的性格にかかわる〈重要な事項を告げない〉行為で満ちていた。
こうした〈禁止行為〉は、〈一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する〉(第一条)こと侭なっている。
だが、罰せられるべき違法行為が、むしろ政府、大蔵省によって奨励されている。
マネー大国は、それほど異常事態になっている。
高利回りを売物に賭けと投機の保険に積立型保険は、銀行預金よりも高利回りというのがセールス・ポイントだが、果たしてどうだろうか。
ひきつづき積立型こども総合保険の場合でみてみる。
こちらは期間五年だが、銀行の期間二年の小口定期預金の年利回り三・六四%と比較してみよう。
この利率(複利)で、積立部分八三万八○○円を五年間預けると、その元利総額は九九万三四二一円となる。
〈満期返戻金〉の一○○万円と大差はない。
ちがいはあっても本質的にちがわないことを「五十歩百歩」というが、こちらは、「九九歩百歩」のちがいである。
確かに、不確実な〈契約者配当金〉がどれだけプラス・アルファされるかで、それだけ銀行預金より高利回りとなるが、さきにみたとおり積立部分をマネーゲームなどで運用し、〈予定利率〉を超える運用益があった場合に配当するものであり、保証のかぎりでない。
セールスのさいは、いまの見通しで将来も大丈夫のように売り込むが、支払われるときにどうなっているかは未確定である。
それどころか、〈予定利率〉そのものが、積立型傷害保険については八七年四月一○日から、また積立型傷害保険以外の積立型保険については八七年六月一日から、それぞれ五%から一挙に一%引き下げて四%になった経緯がある。
この予定利率引き下げの理由は、T海上ではつぎのように説明している。
〈積立型保険は、満期返戻金支払いのための積立保険料部分につき、これまで契約者に年五%の予定利率を約束してきました。
これを換言すれば、積立保険料部分を毎年の予定利率(五%)で運用し、その元利合計額がちょうど満期返戻金となるよう、設計されていたということになります。
一方、我が国経済は、過去に経験したことのない低金利時代を迎えており、公定歩合の引下げに伴い、銀行の定期預金をはじめとする各種金融商品の金利も大幅な低下を示しております。
このような低金利時代に、積立型保険について、将来にわたり五%の予定利率を保証することは、資金運用で極めて厳しい情勢になってきました〉(前出「T海上の現状」)T海上もいっているように、〈予定利率を保証することは、資金運用で極めて厳しい情勢になって〉いる。
T海上は、約束の〈予定利率〉は最低限、保証の義務を負っているが、プラス・アルファの〈契約者配当金〉に期待をかけるのは、よりいっそう〈極めて厳しい情勢〉である。
T海上は、〈将来にわたる〉〈保証〉が困難になった理由を〈我が国経済〉のせいにしている。
だが、経済はもともと生き物であり、まして異常なマネー大国の〈将来にわたる〉〈保証〉はなにもない。
積立部分の〈資金運用〉による儲けの〈予定〉やそれへの期待などは、「当たるも八卦当たらぬも八卦」なのなぜなら、こうしてエビで釣り上げたタイを元手にした投資や融資も、「当たるも八卦当たらぬも八卦」の投機の比重が高いからだ。
T海上の〈資金運用〉の実際をみてみると、八六年度末の運用資産は一兆三○八六億円に達しているが、きわだって多いのが株式や債券などの有価証券で、一兆二○七四億円にもなり、全体の五一・三%を占めている。
株式市場は、それこそ〈過去に経験したことのない〉事態であり、第一章でみたとおりである。
債券にしても、T化学が先物取引で大損したことが明るみになって以来、市場は冷え切り低迷している。
八六年度で収益日本一におどりでたN証券ですら、八七年九月のわずか一カ月で三六○億円も償券売買損をだした。
一カ月前までは年間九○○億円の売買益を予想していたのに、その一分の一以上を一カ月で失った。
N証券の債券売買担当の田窪忠司常務は、〈リスク管理のノウハウなどわれわれにもわかりませんよ〉といい、債券売買のベテランである斉藤惇取締役も、リスク管理の基本は〈相場をはらないこと〉といっている(『N新聞」一月四日付)。
まして〈相場〉ではまだ半素人のT海上が〈相場〉をはることは、リスク管理もなにもあったものではない、ということになる。
〈過去に経験したことのない〉のは、このマネー大国の風船玉のように膨張していた株式や債券などの異常ぶりだった。
投機や賭けは、当たりもすればはずれもするということは、T化学にはじまった債券市場の低迷と、八七年一○月の株価大暴落とその後の株式市場の低迷とが、すでに実証している。
また、前章でみた東京都大田区の旧国鉄貨物ヤード跡地をめぐるF銀行の背信の過剰融資には、東京海上も加わっていた。
T海上は、跡地を落札した桃源社に、五○億円(極度額)を融資。
五○億円だけで、桃源社の資本金一○○○万円の五○○倍という過剰融資である。
親戚会社のM商事は、その産業情報誌「InfOdia」(八八年一月号)の「やっぱり海外不動産投資は魅力的」という記事で、その投機をけしかけているが、T海上は、八六年末、Nに不動産投資会社のトウキョウ・マリン・リアルティー社を設立している。
N銀行の調査では、日本企業の海外への不動産投資は、八四年度以来、連続一倍に増加し、八七年度の投資額は四○億ドル(一ドルU一○円で五一○○億円)を越すのは確実とみられている。
結局のところ、積立型保険の〈契約者配当金〉は、〈予定利率〉の〈予定〉以上に、こうした投機や不動産投資で儲かったときにだけ、そのおこぼれを配当するものにすぎない。
横立型保険は、銀行の小口定になりかねない。
期預金並みの金融商品であり、その〈契約者配当金〉も〈過去に経験したことのない〉このマネー大国の経済とともに変動する。
その意味では、銀行預金の自由金利預金のような自由金利部分を部分的に取り入れたものと解釈することもできる。
それだけの余裕資金や蓄財をしようという場合は、銀行預金のつもりで預けるのも財テクの一つの方法かもしれない。
横立型保険はそうした財テク商品であり、けっして保険そのものに利回りがあるのではない。
T海上の営業担当社員も、「契約者のほとんどが、なにを買ったか忘れ、実際にけがをしても請求しない人がいる」という実態である。
それは、保険部分を餌のエビにした、まぎらわしい金融商品を押し売りしているからだ。
契約者も、けがをしてもエビの部分を忘れてしまうというわけだ。
前章でみたF銀行のRCT作戦のリーティル部門のプロジェクトRと同様に、積立型保険も安い金利で国民大衆からマネーをかき集める商品にすぎない。
しかも、後述のように下手をすると、余裕資金がないのにこの財テク商品を押し売りされて、貸し借りの往復でしぼりとられ、ローン地獄に落とされることだが、エビはエビであり、タイは腐ってもタイである。
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